カナデ歯科 院長 高井です。

最近、TVやCMでも「歯周病」・「歯槽膿漏」・「歯周ポケット」という言葉をよく耳にするようになりました。

なぜ、先ほどのキーワードを耳にする機会が増えたのかというと、日本人が「歯周病」によって歯を失う方がとても多くなったからです。昔と比べて歯を失う原因として、「歯周病」が「虫歯」よりも圧倒的に多くなっているのを皆さんご存知でしょうか？

「歯周病になっても、死ぬわけじゃない」

そう思っていませんか？

実は、歯周病 (歯槽膿漏)は、全身に影響のある病気に関係しています。

中には命にかかわる病気もあります！

今回は、歯周病と関係の深い糖尿病・動脈硬化についてまとめました！

この前編では、まず「歯周病と糖尿病の関連」のご紹介です！

歯周病は、原因であるばい菌に感染することでかかります。歯磨き不足などの理由で、ばい菌のかたまり「歯垢（しこう、プラークとも）」や歯石が取り除かれないままでいると、ばい菌が出す毒素にむしばまれ、歯ぐきの腫れや痛み、歯磨き時の出血、歯がぐらぐらするといった症状が出てきます。さらに、歯を支える顎の骨が溶かされるので、最終的に土台を失った歯はぬけおちてしまうのです！

　もっとも恐ろしい特徴は、「症状が少ない」ことにあると言えます。若いうちから、静かに、じわじわと、気づかないうちに進行していきます。症状がでて気になり始めるころには、すでに病気の中期にまで進んでしまっていることも多いんですよ！

糖尿病の中でも、生活習慣病と言われるのは、肥満や運動不足によって引き起こされる「Ⅱ型糖尿病」です。

　血液中のブドウ糖のことを「血糖」といい、大切なエネルギー源です。エネルギーとして消費されずに余ったブドウ糖は、「インスリン」というホルモンの働きによってグリコーゲンや脂肪に変換され、血糖値が下がります。しかし、インスリンがうまく分泌されなかったり、働かなくなったりすることで、血糖値がいつまでも多い状態が続いてしまうのが糖尿病なんですよ。

高血糖の状態をほおっておくと、次のようなことが起こります。

　・血管が詰まったり、傷ついたりする

　・腎臓の「血液をろ過する機能」が低くなる

　・目の網膜が損傷する

　いずれも、ドロドロになった血液が血管を傷つけ続けたためにおこるものです。

歯周病菌はお口の中の血管に入り込み、全身に運ばれて行きます。このばい菌の細胞の中にある毒素に対して肝臓や脂肪などの細胞が反応を起こし、サイトカインという物質を作り出します。その物質（TNF-α）にはインスリンの働きを妨害する作用があるので、血糖値が下がりにくくなってしまうのです！    

糖尿病になると、全身の細胞に栄養が行き渡らなくなります。栄養不足になると、ばい菌への抵抗力が下がります。つまり「ばい菌への感染症である歯周病にかかりやすい・進みやすい状態」です。このように、歯周病と糖尿病は、互いが互いを悪くさせるという、悪循環の関係にあります。

　実際に、糖尿病の患者さんは、健康な人にくらべて約2.6倍も歯周病になりやすいという報告もあるんですよ！

歯周病菌が血流に乗って全身を巡るのは、意外な事実でしたね。一回一回の歯磨きでばい菌の数を減らしたり、歯医者さんで歯垢や歯石をきれいに取ってもらうのが、全身の健康を守ることにつながります！

引き続き後編では、動脈硬化と歯周病の関連についてご紹介します！