歯槽骨が溶けるメカニズム
歯周病がなぜ歯を失うことにつながるのか？（前編）

歯周病は、日本人成人が歯を失う原因の第1位（41.8％）です！第2位の虫歯（32.4％）を10％近くも引き離しているほどです。（2007年3月、（財）8020推進財団調べ）

日本人成人の8割もの人がかかっている、国民病ともいえる病気ですが、なぜこんなにも歯が抜けてしまうことになるのでしょうか？

１、骨を作る細胞、吸収する細胞

人間の体は、常に新しい細胞と古い細胞が入れ替わっています。骨もまた、新しく作られ、吸収されてなくなるのを繰り返しているのです。健康なとき、骨の量が変わらず保たれているのは「骨を作る量」「骨を吸収する量」のバランスが取れているからなんですよ。

この、骨を作る細胞を「骨芽細胞」、吸収する細胞を「破骨細胞」と言います。

2、長期の炎症が、骨のバランスを崩す

歯周病菌がお口の中にとどまり、毒素を出し続けると体に変化が起こります。

「歯ぐきが炎症を起こす」と言われますが、これは体の免疫システムが病原体と戦うための状態です。病原体が炎症を起こすのではないのです。

病原体に抵抗するための細胞が歯ぐきの中で増えて戦います。炎症が長く続いてしまうと、破骨細胞が増えてしまいます！免疫細胞が、破骨細胞を増やす働きをする物質を生産するからです。こうして、骨を作る量よりも、骨を吸収する量の方が多くなってしまい、顎の骨がじわじわと失われて行ってしまうのです。

 １、骨が作られ過ぎないの体の働き

骨を作る量が多くなってしまっても、骨の密度が高くなりすぎて、骨髄が狭くなるなどの問題があるので、骨芽細胞ばかりが働くのを防ぐ仕組みがあります。「骨芽細胞自体が、破骨細胞を増やす物質を作る」というものです。

２、ＬＰＳ

さて、マウスウォッシュなどの製品説明で、ＬＰＳについて書かれているのを読んだことがあるという方もいるかもしれません。歯周病菌が出す細胞内毒素ＬＰＳは、骨芽細胞と、破骨細胞を増やす物質に作用します。破骨細胞をたくさん増やし、さらに細胞を長生きさせるので、骨を吸収する量の方が多くなってしまうのです！

3、ＰＧＮなど

歯周病菌は他にもＰＧＮやジンジパインという物質も出し、破骨細胞をたくさん増やします。

骨の細胞は、骨にかかる負担に合わせて細胞を作り替えています。お口の中なら、「かみ合わせる力という負担」ですね。力が強くかかるところは、骨を吸収し再生する働きが活発になります。

しかし、歯周病で歯ぐきなどの組織が弱っていたり、かみ合わせが悪いと、その部分の顎の骨に力がかかりすぎてしまいます。すると、破骨細胞を増やす物質が増加していくのです。

 様々な要因が重なって、顎の骨が溶けていくことが分かりますね。顎の骨は一旦破壊されてしまうと、基本的には元通りには戻りません。予防が何より大切ですね。

後編では、歯周病のなりたちと、治療法についてのご紹介です。顎の骨を再生する画期的な治療法もまとめています！

このように、歯石と歯周病には深い関係があるのです。病気がすすむにつれ、口臭もどんどん強烈になっていきます！歯医者さんを受診して歯石を取り除いてもらいましょう。ついたばかりの歯石なら柔らかく、治療時の体の負担も少なくてすむので定期的な除去がおすすめです。

後編では歯石の除去と、予防する方法についてご紹介します。口臭だけではなく、歯周病の改善・予防に効果があるんですよ！